モリのお芝居には大きな引き出しが一つしかない!
これはよく、みんなから言われる事なんだけど、実はそうじゃないと思う。
TEAM-NACSの「FOUR」のラストのヤスケンのお芝居を観てもそう。
老人役で、ものすごく心に染み入るいい芝居を魅せてくれている。
「ライナス」の「テツヤ」役もそう。実に穏やかそうで優しく包み込んでくれる役をこなしている。
(まあ、これは怪我の功名もあるが…(笑))
まわりからは「モリは自分はこの演技しか出来ないと思い込んでいるから…」という声さえある。
でも、モリという人は非常に相手の事をよく見ていて、
相手にきちんと合わせてあげられる度量を持っている。
だから、まわりから「モリには大きな引き出しが一つしかないからね」と言われれば
それすらも演じているところさえあるようにも思える。
LOOSERの時に思った。あるテレビ番組で、LOOSERの舞台裏を追っかけた番組があった。
LOOSERを、NACS初めての地方公演「池袋サンシャイン劇場」でやることが決まった時のこと、
東京公演にあたって、プロデューサーから徹底的に脚本の変更を余儀なくされた事があった。
そこで、モリは「これが自分だから…そこまで変えろと言われても…」と言うような事を言い
更なるプレッシャーを与えられていた。
でもどうだろう、実際に北海道公演を始めに観た人の感想と、東京公演を観た人の感想の違い。
また、両方観た人もいるだろう。モリは見事にプロデューサーの意向を実現している。
それがモリのパワーであり、みんなを引っ張っていく力なんだとも思う。
脚本を書く作業というのは、人それぞれで、
「ストーリー先行」の人もいれば「あてがき(役者を想定して書く)」の人もいる。
でも、いずれにしても、いろいろな人物を観察する力、発想力、
そして必要な知識を学ぶ作業、どれをとっても容易ではない。
しかも一つの芝居が出来上がるまでには、
他のNACSのメンバーは役になりきることだけを考えればいいが、
モリはそうはいかない。自分で演じつつ演出までも行わなければならない。
ある人は、モリは脚本家の方向に進むのでは…と言う人もいるが、
私は実はそれはあまり望んでいない。劇団にはそれぞれカラーがあって、実は、
モリのあのパワーとテンションこそが何物でもない「TEAM-NACSのカラー」だと思っているから。
LOOSER以前の作品を決して否定するわけではないが、
LOOSER以降、周りの環境を含めものすごくTEAM-NACS自体が変貌を遂げた。
そして昨年のCOMPOSERでの全国公演。
この間の入院や病気がいい例で、モリは人一倍のプレッシャーと戦ってきたことだろうし、
これからも、それはおそらく続くと思う。
(プレッシャーのあまり、また身体をこわすことだけは無い様に祈るが)
そして人一倍、人に対して気遣いを持って接し、優しさを忘れないでいる人だと思う。
だから…前に述べた2つの舞台のように、そういう役にはものすごくモリは「ハマる」んだと思う。
才能と優しさ思いやりとたくさんの引き出しを持った男。それが私の中での「森崎博之」である。
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